AI の現状
OpenRouter による 100 兆トークンの実証研究
概要
この一年は、大規模言語モデル(LLM)の進化と実社会での利用における転換点となりました。初めて広く採用された推論モデルである o1 が 2024 年 12 月 5 日に公開されたことで、この分野は単一パスのパターン生成から多段階の熟考を伴う推論へと移行し、導入、実験、そして新たな種類のアプリケーションの展開が加速しました。この変化が急速に進む一方で、これらのモデルが実際にどのように使われてきたかについての実証的な理解は遅れをとってきました。本研究では、多種多様な LLM にわたる AI 推論プロバイダーである OpenRouter プラットフォームを活用し、タスク、地域、時間にまたがる実世界の LLM インタラクションを 100 兆トークン以上分析します。実証研究では、オープンウェイトモデルの大幅な普及、多くの人が主流と考える生産性向上タスクだけにとどまらない創作ロールプレイやコーディング支援カテゴリーの突出した人気、そしてエージェント型推論の台頭が見られます。さらに、継続利用の分析から特定されたのは 基盤となるコホート、すなわち後続のコホートよりもはるかに長く利用を継続する初期ユーザーです。この現象をシンデレラの 「ガラスの靴」 効果と呼びます。これらの知見は、開発者とエンドユーザーが実環境で LLM を利用する方法が複雑かつ多面的であることを示しています。モデル構築者、AI 開発者、インフラストラクチャプロバイダーへの示唆を論じ、利用状況に関するデータに基づいた理解が、LLM システムのより良い設計と導入にどう役立つかを概説します。
はじめに
わずか一年前、大規模言語モデルを取り巻く状況は根本的に異なっていました。2024 年後半より前は、テキスト系列の続きを生成するよう最適化された、シングルパスの自己回帰型予測モデルが最先端システムの主流でした。先行するいくつかの取り組みでは、高度な指示追従とツール使用によって推論に近づけようと試みていました。たとえば、 Anthropic の Sonnet 2.1 & 3 のモデルは、高度な ツール使用と検索拡張生成(RAG)に優れており、また Cohere の Command R のモデルには、構造化されたツール計画トークンが組み込まれていました。これとは別に、オープンソースプロジェクトを手がける Reflection などは、学習時の教師あり思考連鎖と自己批評ループを探求していました。これらの高度な手法は推論に似た出力と優れた指示追従を実現しましたが、基本的な推論手順は依然として単一の順伝播に基づいており、反復的な内部計算を行うのではなく、データから学習した表面的なトレースを出力していました。
このパラダイムが進化したのは、 2024 年 12 月 5 日に OpenAI が推論モデル o1 (コードネーム: Strawberry) の初の完全版をリリースしたときです。2024 年 9 月 12 日にリリースされたプレビュー版は、従来の自己回帰型推論からの脱却をすでに示していました。従来のシステムとは異なり、 o1 は、最終出力を生成する前に、内部での多段階の熟考、潜在的な計画、反復的な改善を伴う、拡張された推論時の計算プロセスを採用しました。実証的には、これによって数学的推論、論理的一貫性、多段階の意思決定が体系的に改善され、パターン補完から構造化された内部認知への移行が示されました。振り返ると、昨年はこの分野の真の転換点であり、それ以前のアプローチは推論への方向性を示していたものの、 o1 は、推論を単に 説明 するのではなく、意図的な多段階計算によって実行する、初めて広く導入されたアーキテクチャを実現しました 。
LLM の能力の最近の進歩は広く報告されていますが、これらのモデルが実際にどのように使われているかについての体系的な証拠は依然として限られています 。既存の報告は、大規模な行動データよりも、定性的な実演やベンチマークの性能を重視する傾向があります。この隔たりを埋めるため、100 兆トークンのデータセットを活用して LLM 利用の実証研究を行い、そのデータの提供元は OpenRouter で、多様な LLM クエリのハブとなるマルチモデル AI 推論プラットフォームです。
OpenRouter の立場からは、詳細な利用パターンを独自の視点で把握できます。クローズドソース API とオープンウェイトのデプロイの両方にまたがる幅広いモデルへのリクエストを統合管理しているため、OpenRouter は、開発者やエンドユーザーがさまざまなタスクで言語モデルを実際にどのように呼び出しているかを示す代表的なデータを収集しています。この豊富なデータセットを分析することで、どのタスクにどのモデルが選ばれているか、利用状況が地域や時間の経過によってどのように変化するか、価格や新モデルのリリースなどの外部要因が行動にどのような影響を与えるかを観察できます。
本稿では、Anthropic の経済的影響および利用状況の分析 や OpenAI のレポート 「How People Use ChatGPT」 など、AI 導入に関する先行の実証研究から着想を得て、中立的でエビデンスに基づく議論を目指します。まず、タスクやモデルの分類方法を含め、データセットと方法論について説明します。次に、利用状況のさまざまな側面を明らかにする一連の分析を掘り下げます:
- オープンソースモデルとクローズドソースモデル: オープンソースモデルとプロプライエタリモデルの採用パターンを比較し、オープンソースのエコシステムにおける傾向と主要プレイヤーを特定します。
- エージェント型推論: 複数ステップでツールを活用する推論パターンの出現を調査し、モデルを単一ターンの対話に使うのではなく、より大規模な自動化システムの構成要素として利用する傾向の高まりを捉えます。
- カテゴリー分類: タスクのカテゴリー別(プログラミング、ロールプレイ、翻訳など)に利用状況を分析し、どの応用分野が最も多くのアクティビティを生み出しているか、またその分布がモデルのプロバイダーによってどう異なるかを明らかにします。
- 地域: 世界の利用パターンを分析し、大陸間での LLM の普及状況を比較するとともに、米国内の利用状況を詳しく調べます。これにより、地域的な要因や現地のモデルの提供状況が全体の需要をどのように形成しているかを明らかにします。
- 実効コストと利用動向: 利用状況と実効コストの関係を評価し、実際の LLM 採用における経済的な感応度を捉えます。この指標は入力トークンと出力トークンの合計の平均に基づき、キャッシュの影響も考慮しています。
- 継続利用のパターン: 最も広く使われているモデルの長期的な継続利用を分析し、持続的で定着性の高い行動を特徴づける 基盤コホート を特定します。これをシンデレラの 「ガラスの靴」 効果と定義し、ユーザーのニーズとモデルの特性が初期段階で合致することで長期的な適合が生まれ、継続的な利用が維持されます。
最後に、これらの調査結果が実際の LLM 利用について何を明らかにしているかを考察し、予想外のパターンに焦点を当て、いくつかの誤解を正します。
データと方法論
OpenRouter プラットフォームとデータセット
本分析は、ユーザーや開発者を数百の大規模言語モデルに接続する統合 AI 推論レイヤーである OpenRouter プラットフォームから収集されたメタデータに基づいています。OpenRouter 上の各ユーザーリクエストは、ユーザーが選択したモデルで実行され、その結果生じる「生成」イベントを記述した構造化メタデータがログに記録されます。本研究で使用するデータセットは、 匿名化されたリクエスト単位のメタデータ で構成され、執筆時点までの約二年間にわたる、世界中のユーザーによる数十億のプロンプトと応答のペアを対象としています。特に直近の一年間に焦点を当てています。
重要なのは、プロンプトや補完の元のテキストにはアクセスしていないという点です。分析で使用するのは メタデータ のみで、ユーザーコンテンツを公開することなく、各 生成の構造、タイミング、コンテキストを捉えます。このプライバシーを保護する設計により、大規模な行動分析が可能になります。
各生成レコードには、タイミング、モデルとプロバイダーの識別子、トークン使用量、システムのパフォーマンス指標に関する情報が含まれます。トークン数にはプロンプト(入力)と補完(出力)の両方のトークンが含まれ、モデル全体のワークロードとコストを測定できます。メタデータには、地理的なルーティング、レイテンシ、使用状況のコンテキストに関するフィールドも含まれます(たとえば、リクエストがストリーミングされたか、キャンセルされたか、ツール呼び出し機能が使用されたかなど)。これらの属性を組み合わせることで、モデルが実際にどのように使用されているかを、テキストを含まない詳細な形で把握できます。
このメタデータに基づくすべての分析と集計、および大部分の可視化には、分析プラットフォーム Hex を使用し、バージョン管理された SQL クエリ、変換、最終的な図の生成を行う再現可能なパイプラインを構築しました。
このデータセットは 観察に基づくものであることを強調しており、モデルの可用性、価格、ユーザーの好みによって形作られる OpenRouter プラットフォーム上の実際のアクティビティを反映しています。2025 年時点で、OpenRouter は 70 社を超えるプロバイダーの 300 以上のアクティブなモデルをサポートし、数百万人の開発者とエンドユーザーにサービスを提供しており、利用の 50% 以上が米国外からのものです。プラットフォーム外の一部の利用パターンは捉えられていませんが、OpenRouter の世界的な規模と多様性により、大規模な LLM 利用動向を把握するための代表性のある視点を提供できます。
コンテンツ分類用 GoogleTagClassifier
この調査では、ユーザーのプロンプトやモデルの出力に直接アクセスすることはできませんでした。代わりに、 OpenRouter は内部で分類を行っており、対象は全プロンプトの約 0.25% を占めるランダムサンプル とその応答で、使用する非独占的なモジュールは GoogleTagClassifierです。これは全体のアクティビティの一部にすぎませんが、OpenRouter が処理するクエリの総量を考えると、基となるデータセットは依然として相当な規模です。GoogleTagClassifier は Google Cloud Natural Language の classifyText コンテンツ分類 API と連携します。
API はテキスト入力に階層的で言語に依存しない分類体系を適用し、1 つ以上のカテゴリーパス(例: /Computers & Electronics/Programming、 /Arts & Entertainment/Roleplaying Games)と、それぞれに対応する [0,1] の範囲の信頼度スコアを返します。分類器はプロンプトデータ(先頭の 1,000 文字まで)を直接処理します。分類器は OpenRouter のインフラストラクチャ内にデプロイされており、分類結果の匿名性が保たれ、個々の顧客に紐付けられないことを保証しています。信頼度スコアがデフォルトのしきい値である 0.5 を下回るカテゴリーは、それ以降の分析から除外されます。分類システム自体は完全に OpenRouter のインフラストラクチャ内で動作し、本研究の対象には含まれておらず、本分析では元のプロンプト内容ではなく、分類結果として出力されたカテゴリー(実質的にはプロンプトの分類を記述するメタデータ)のみを使用しました。
これらの詳細なラベルを大規模に活用できるよう、GoogleTagClassifier の分類体系を本調査で定義した少数のグループに対応付け、各リクエストに タグを割り当てます。各タグは上位の カテゴリ に一対一で対応し、代表的な対応関係は次のとおりです。
- プログラミング: 分類元:
/Computers & Electronics/Programmingまたは/Science/Computer Science/* - ロールプレイ: 分類元:
/Games/Roleplaying Gamesおよび、次のカテゴリ配下の創作的な対話に関する末端カテゴリ:/Arts & Entertainment/* - 翻訳: 分類元:
/Reference/Language Resources/* - 一般的な質問応答/知識: 分類元:
/Reference/General Reference/*および/News/*事実の検索が目的とみられる場合 - 生産性/文章作成: 分類元:
/Computers & Electronics/Software/Business & Productivity Softwareまたは/Business & Industrial/Business Services/Writing & Editing Services - 教育: 分類元:
/Jobs & Education/Education/* - 文学/創作: 分類元:
/Books & Literature/*および、次のカテゴリ配下の物語に関する末端カテゴリ:/Arts & Entertainment/* - 成人向け: 分類元:
/Adult - その他: 主となる対応付けが当てはまらないロングテールのプロンプトを対象とします。(注:以下の分析の大半では、このカテゴリを除外しています。)
このアプローチには本質的な限界があり、たとえば、事前定義された分類体系への依存によって、新しい振る舞いや分野横断的な振る舞いの分類方法が制約され、一部のやり取りの種類は既存のクラスにまだうまく当てはまらない場合があります。実際には、内容が重複する分野にまたがる場合、一部のプロンプトには複数のカテゴリラベルが付与されます。それでも、分類器によるカテゴリ分類は、その後の分析のための視点をもたらします。これにより、利用の 量 だけでなく、LLM の 利用目的も定量化できます。
モデルとトークンのバリエーション
特に取り上げるべきバリエーションがいくつかあります。
- オープンソースとプロプライエタリ: モデルの分類では、 オープンソース(簡略化のため OSS と表記) は重みが公開されているモデルを指し、 クローズドソース は制限付き API 経由でのみアクセスできるモデル(例:Anthropic の Claude)を指します。この区別により、コミュニティ主導のモデルとプロプライエタリモデルの採用状況を比較して測定できます。
- 開発地域(中国とその他の地域): 中国の LLM の台頭と独自のエコシステムを踏まえ、主な開発地域に基づいてモデルにタグを付けています。 中国のモデル には、中国、台湾、香港の組織が開発したモデル(例:Alibaba の Qwen、Moonshot AI の Kimi、DeepSeek)が含まれます。 RoW(その他の地域)のモデル には、北米、欧州、その他の地域のモデルが含まれます。
- プロンプトトークンと補完トークン: 区別するのは、 プロンプトトークン(モデルに提供される入力テキスト)と、 補完トークン(モデルが生成する出力)です。 合計トークン数 は、プロンプトトークン数と補完トークン数の合計です。 推論トークン は、推論機能を標準で備えたモデルの内部推論ステップを表し、 補完トークンに含まれます。
特に記載がない限り、 トークン量 は プロンプト(入力)と補完(出力)のトークンの合計を指します。
地域別セグメンテーション
LLM の利用における地域別の傾向を把握するため、ユーザーの所在地別にリクエストを分類します。直接的なリクエストメタデータ(IP に基づく位置情報など)は、通常、不正確であるか匿名化されています。その代わりに、各アカウントに関連付けられた 請求先所在地 に基づいてユーザーの地域を特定します。請求データにはユーザーの支払い方法やアカウント登録に紐づく国や地域が反映されるため、ユーザーの所在地をより確実に推定する指標となります。この請求先に基づく分類を、地域別の導入状況とモデルの選好の分析に使用します。
この方法には限界があります。一部のユーザーは第三者による請求や組織の共有アカウントを利用しているため、請求先が実際の所在地と一致しない場合があります。企業アカウントでは、複数の地域にわたるアクティビティが単一の請求主体に集約されている場合があります。こうした不完全さはあるものの、アクセスできたメタデータを踏まえると、請求先の地理情報は、プライバシーを保護しながら地理的分析を行ううえで利用可能な、最も安定した解釈しやすい指標です。
対象期間と範囲
本分析は主に 2025 年 11 月を終点とする直近 13 か月間を対象としていますが、基礎となるメタデータのすべてがこの期間全体を網羅しているわけではありません。モデル単位および料金に関する分析の大半は、2024 年 11 月 3 日~2025 年 11 月 30 日の期間に焦点を当てています。ただし、カテゴリ単位の分析(特に GoogleTagClassifier の分類体系を用いた分析)は、OpenRouter で一貫したタグ付けが利用可能になった時期を反映し、2025 年 5 月からのより短い期間に基づいています。特に、詳細なタスク分類フィールド(例えば、 プログラミング、 ロールプレイ、 テクノロジーなどのタグ)が追加されたのは 2025 年半ばです。そのため、カテゴリセクションのすべての知見は、それ以前の一年間全体ではなく、2025 年半ばの利用状況を代表するものとして解釈する必要があります。
特に指定がない限り、すべての時系列集計は、UTC に正規化されたタイムスタンプを使用し、プロンプトと補完のトークンを合計して週単位で算出します。この方法により、モデルファミリー間の比較可能性を確保し、一時的な急増や地域のタイムゾーンの影響による偏りを最小限に抑えます。
オープンソースモデルとクローズドソースモデルの比較

AI エコシステムにおける中心的な課題は、オープンウェイトモデル(簡略化のため OSS と略します)とプロプライエタリモデルのバランスです。以下の図は、過去一年間に OpenRouter 上でこのバランスがどのように変化したかを示しています。プロプライエタリモデル、特に北米の大手プロバイダーのモデルが依然としてトークンの大半を処理していますが、OSS モデルの利用は着実に増加し、2025 年後半には利用量の約三分の一に達しました。
この拡大は偶然ではありません。使用量の急増は、 DeepSeek V3 や Kimi K2 などの主要なオープンモデルのリリース(最初の図の縦の破線で表示)と一致しており、 DeepSeek V3 や GPT OSS モデル などの競争力のある OSS の新モデルが急速に採用され、その増加が維持されていることを示唆しています。重要なのは、こうした増加がリリース直後の数週間を過ぎても続いており、短期的な実験ではなく実際の本番利用を示唆している点です。

この成長の大きな部分を支えてきたのは 中国で開発されたモデルです。中国 OSS モデルは、2024 年末のごくわずかな規模(週間シェアは最低で 1.2%)から着実に普及し、週によっては全モデルの総使用量の約 30% に達しました。一年間の期間全体では、週間トークン量に占める割合は平均で約 13.0% となり、特に 2025 年後半に大きく成長しました。比較すると、中国以外の OSS モデルは平均 13.7% で、中国以外のプロプライエタリモデルが最大のシェア(平均 70%)を維持しました。中国 OSS の拡大は、競争力のある品質だけでなく、迅速な反復開発と高頻度のリリースサイクルも反映しています。Qwen や DeepSeek などのモデルは定期的なモデルリリースを維持し、新たなワークロードへの迅速な適応を可能にしました。このパターンは、オープンソース分野を大きく変え、LLM 全体にわたる世界的な競争を進展させました。
これらの傾向は、LLM エコシステムにおける持続的な二重構造を示しています。プロプライエタリシステムは、特に規制対象や企業向けのワークロードにおいて、信頼性と性能の上限を引き続き定めています。一方、OSS モデルはコスト効率、透明性、カスタマイズ性を提供し、特定のワークロードにとって魅力的な選択肢となっています。 現在、均衡点はおよそ 30% に達しています。 これらのモデルは相互に排他的なものではなく、開発者やインフラプロバイダーがますます選好するマルチモデルスタックの中で、互いを補完しています。
主要なオープンソースプレイヤー
以下の表は、データセット内の主要なモデルファミリーを、提供されたトークンの総量で順位付けしたものです。OSS モデルの勢力図は過去一年で大きく変化しており、DeepSeek は依然としてトークン量で最大の OSS モデルですが、新規参入モデルが急速に勢力を拡大するにつれて、その優位性は弱まっています。現在は複数のオープンソースモデルファミリーがそれぞれ相当な利用量を維持しており、エコシステムの多様化を示しています。
| モデル開発元 | 総トークン数(兆) |
|---|---|
| DeepSeek | 14.37 |
| Qwen | 5.59 |
| Meta LLaMA | 3.96 |
| Mistral AI | 2.92 |
| OpenAI | 1.65 |
| Minimax | 1.26 |
| Z-AI | 1.18 |
| TNGTech | 1.13 |
| MoonshotAI | 0.92 |
| 0.82 |

この図は、主要な個々のオープンソースモデルの市場シェアが週ごとに劇的に変化する様子を示しています。期間の初期(2024 年末)には市場が高度に集中しており、DeepSeek ファミリーの 2 つのモデル(V3 と R1)が一貫して OSS トークン使用量全体の半分以上を占め、グラフの下部に大きな濃青色の帯を形成していました。
このほぼ独占的な構造は、夏の転換点(2025 年半ば)を経て崩壊しました。それ以来、市場は幅と深さの両面で拡大し、利用は大幅に多様化しています。Qwen のモデル、 Minimax の M2、MoonshotAI の Kimi K2、OpenAI の GPT-OSS シリーズ といった新規参入モデルはいずれも急成長し、リクエストの大きな割合を処理するようになり、多くの場合、リリースから数週間以内に本番環境規模での採用を実現しています。これは、オープンソースコミュニティや AI スタートアップが、新しい機能や優れた効率性を備えたモデルを導入することで、短期間での採用を実現できることを示しています。
2025 年後半までに、競争の構図はほぼ独占状態から多様なモデルが共存する状態へと変化しました。OSS トークンの 25% を超える単独のモデルはなく、トークンのシェアは現在、五つから七つのモデルにより均等に分散しています。実用面では、ユーザーが「最良」の選択肢を一つだけ既定として使うのではなく、より幅広い選択肢に価値を見いだしていることを意味します。この図は OSS モデル間の相対的なシェア(絶対量ではありません)を示していますが、市場の分散化とオープンソースのエコシステム内での競争激化に向けた明確な変化が見られます。
全体として、オープンソースモデルのエコシステムは現在、非常に活発に変化しています。 主な知見は次のとおりです:
- 上位モデルの多様性: かつては単一のモデルファミリー(DeepSeek)が OSS の利用で圧倒的なシェアを占めていましたが、現在では半ダースほどのモデルがそれぞれ相応のシェアを維持する傾向が強まっています。単独のオープンモデルが OSS トークンの約 20~25% を超えるシェアを継続的に占めることはありません。
- 新規参入モデルの急速な拡大: 高性能な新しいオープンモデルは、数週間で大きな利用シェアを獲得できます。たとえば、MoonshotAI のモデルは従来の OSS 上位モデルに匹敵するまで急速に成長し、MiniMax のような新規参入モデルでさえ、わずか四半期の間にトラフィックがゼロから相当な規模に達しました。これは、切り替えの障壁が低く、ユーザーが積極的に試そうとしていることを示しています。
- 反復的な改善の優位性: DeepSeek が長期にわたって上位を維持していることは、継続的な改善が不可欠であることを裏付けています。DeepSeek は相次ぐリリース(Chat-V3、 R1 など)によって、競合モデルが登場しても競争力を維持しました。開発が停滞した OSS モデルは、最先端の更新やドメイン特化のファインチューニングを頻繁に行うモデルにシェアを奪われる傾向があります。
2025 年現在のオープンソース LLM の分野は、イノベーションのサイクルが速く、首位の座が保証されない競争的なエコシステムの様相を呈しています。モデル開発者にとって、これは最先端の性能を備えたオープンモデルを公開すれば即座に利用が広がる可能性がある一方、利用シェアを維持するには継続的な追加開発への投資が必要であることを意味します。ユーザーやアプリケーション開発者にとっては好ましい傾向であり、選択できるオープンモデルが充実し、特定の分野(ロールプレイなど)ではプロプライエタリシステムと同等、あるいはそれ以上の能力を備えていることもよくあります。
モデルサイズと市場適合性:中規模が新たな小規模に

一年前のオープンソースモデルのエコシステムは、主に膨大な数の小型で高速なモデルと、少数の強力な大規模モデルという両極端の間のトレードオフが中心でした。しかし、過去一年を振り返ると、市場が大きく成熟し、中規模モデルという新たなカテゴリーが登場して成長していることがわかります。なお、モデルはパラメータ数に基づいて以下のように分類しています。
- 小規模: パラメーター数が 150 億未満のモデルです。
- 中規模: パラメーター数が 150 億から 700 億のモデルです。
- 大規模: パラメーター数が 700 億以上のモデルです。
開発者とユーザーの行動に関するデータからは、複雑な実態が読み取れます。数値を見ると、すべてのカテゴリーでモデルの 数 が増加した一方で、 使用状況 は大きく変化しています。小規模モデルの人気が低下する一方で、中規模・大規模モデルがその価値を取り込んでいます。

これらのトレンドを牽引するモデルを詳しく見ると、それぞれ異なる市場動向が明らかになります。
- 「小規模」市場:利用シェアの全体的な低下。 新しいモデルが継続的に登場しているにもかかわらず、小規模モデルのカテゴリー全体では利用シェアが低下しています。このカテゴリーは細分化が進んでいるのが特徴です。単一のモデルが長期にわたって支配的な地位を維持することはなく、Meta、Google、Mistral、DeepSeek など、多様なプロバイダーから新しいモデルが絶えず参入し、入れ替わっています。例えば、
Google Gemma 3.12B(2025 年 8 月リリース)は急速に普及しましたが、ユーザーが常に次の最良の選択肢を探す、競争の激しい市場で競い合っています。 - 「中規模」市場:「モデルと市場の適合」の模索。 中規模モデルのカテゴリーは、市場の創出を明確に示しています。このセグメント自体は、
Qwen2.5 Coder 32Bが 2024 年 11 月にリリースされ、事実上このカテゴリーを確立するまで、ごく小規模でした。その後、このセグメントは、Mistral Small 3(2025 年 1 月)やGPT-OSS 20B(2025 年 8 月)など、ユーザーの関心を獲得した有力な競合モデルの登場により、競争的なエコシステムへと成熟しました。このセグメントは、ユーザーが能力と効率性のバランスを求めていることを示しています。 - 「大規模」モデルのセグメント:多様な勢力が共存する状況。 「質への逃避」は集約ではなく、多様化につながっています。現在、大規模モデルのカテゴリーには、
Qwen3 235B A22B Instruct(2025 年 7 月リリース)やZ.AI GLM 4.5 AirからOpenAI: GPT-OSS-120B(8 月 5 日)まで、高性能な競合モデルが幅広く存在し、それぞれが相当量の継続的な利用を獲得しています。この多様性は、ユーザーが単一の標準に収束するのではなく、複数のオープンな大規模モデルを積極的にベンチマークで比較していることを示唆しています。
小規模モデルがオープンソースのエコシステムを支配する時代は、終わったのかもしれません。市場は現在二極化しており、ユーザーは新たに登場した強力な中規模モデル群に移行するか、最も高性能な単一の大規模モデルにワークロードを集約するかのいずれかに向かっています。
オープンソースモデルは何に使われますか?
現在、オープンソースモデルは、創作、技術、情報の各分野にわたる非常に幅広いタスクに利用されています。構造化されたビジネスタスクでは依然としてプロプライエタリモデルが優勢ですが、OSS モデルは特に次の二つの分野で主導的な地位を築いています: 創作的なロールプレイ と プログラミング支援。これらのカテゴリーを合わせると、OSS のトークン使用量の大半を占めています。

上の図が示すように、OSS モデルの全使用量の半分以上を占めるのは ロールプレイで、 プログラミング が 2 番目に大きいカテゴリーです。これは、ユーザーがオープンモデルを主に創造的な対話(物語の創作、キャラクターのロールプレイ、ゲームのシナリオなど)とコーディング関連のタスクに利用していることを示しています。ロールプレイが大きな割合を占めていること(OSS の全トークンの 50% 超で推移)は、オープンモデルが優位性を持つユースケースを浮き彫りにしており、創造性を発揮する用途に利用でき、コンテンツフィルターによる制約も少ない傾向があるため、ファンタジーやエンターテインメントのアプリケーションにとって魅力的です。ロールプレイのタスクには柔軟な応答、文脈の保持、感情の機微が求められますが、オープンモデルは商用の安全対策やモデレーション層による厳しい制約を受けずに、これらの特性を効果的に発揮できます。そのため、キャラクター中心の体験、ファンフィクション、インタラクティブなゲーム、シミュレーション環境を試すコミュニティにとって、特に魅力的です。

上の図は、中国 OSS モデルのみに絞った場合のカテゴリー別内訳の推移を示しています。これらのモデルは、もはや主に創造的なタスクに使われているわけではありません。ロールプレイは約 33% で引き続き最大のカテゴリーですが、プログラミングとテクノロジーを合わせると、現在では利用の過半数(39%)を占めています。この変化は、 Qwen や DeepSeek のようなモデルが、コード生成やインフラ関連のワークロードでますます使われていることを示唆しています。大量に利用する企業ユーザーが特定のセグメントに影響を与えている可能性はありますが、全体的な傾向としては、中国 OSS モデルが技術分野や生産性分野で直接競合していることを示しています。

プログラミングのカテゴリーだけに注目すると、Anthropic の Claude のような優れたモデルを反映し、コーディング支援全体では依然としてプロプライエタリモデルが大部分を担っていることがわかります(灰色の領域)。しかし、OSS の範囲内では顕著な変化があり、2025 年半ばには中国 OSS モデル(青)がオープンソースによるコーディング支援の大半を提供していました(初期の成功例である Qwen 3 Coder などが牽引しました)。2025 年第 4 四半期には、Meta の LLaMA-2 Code や OpenAI の GPT-OSS シリーズ などの欧米 OSS モデル(オレンジ)が急伸しましたが、ここ数週間では全体に占めるシェアが低下しました。この変動は、非常に競争の激しい環境を示唆しています。実用面での示唆として、オープンソースのコードアシスタントの利用は流動的で、新しいモデルの品質に非常に敏感に反応し、開発者はその時点で最良のコーディング支援を提供する OSS モデルであれば、どれでも利用する姿勢を持っています。この図の制約として絶対的な利用量は示されておらず、オープンソースによるコーディングの利用は全体として増加しているため、青い帯の縮小は中国 OSS がユーザーを失ったことではなく、相対的なシェアのみが低下したことを意味します。

ロールプレイのトラフィックだけを見ると、現在はその他の地域の OSS モデル(オレンジ、直近の数週間で 43%)とクローズドモデル(グレー、直近では約 42%)がほぼ均等に処理しています。これは、プロプライエタリモデル(グレー)がトークンシェアの約 70% を占め、このカテゴリーを支配していた 2025 年前半からの大きな変化です。当時(2025 年 5 月)、欧米の OSS モデルはトラフィックの約 22% にとどまり、中国の OSS モデル(青)のシェアは約 8% とわずかでした。年間を通じて、プロプライエタリモデルのシェアは着実に低下しました。2025 年 10 月末までには、欧米と中国のオープンソースモデルがともに大きくシェアを伸ばし、この傾向が加速しました。
こうした収束は健全な競争を示しており、ユーザーには創作的なチャットやストーリーテリングのために、オープンなモデルとプロプライエタリなモデルの両方で実用的な選択肢があります。これは、開発者がロールプレイ/チャットモデルへの需要を認識し、それに合わせてリリースを調整していることを反映しています(例:対話によるファインチューニング、キャラクターの一貫性を保つためのアライメントの追加)。留意すべき点として、「ロールプレイ」には幅広いサブジャンル(気軽な会話から複雑なゲームシナリオまで)が含まれます。しかし、大局的に見ると、この創作分野では OSS モデルに優位性があることは明らかです。
解釈。 OSS エコシステム全体で見ると、主なユースケースは次のとおりです。 ロールプレイと創作対話: 最も多いカテゴリーで、オープンモデルは検閲なしで利用できたり、架空の人格や物語のタスクに合わせて容易にカスタマイズできたりするためと考えられます。 プログラミング支援: オープンモデルのコーディング能力の向上に伴い、利用規模が拡大している、第二位のカテゴリーです。多くの開発者は API コストを避けるため、ローカルで OSS モデルをコーディングに活用しています。 翻訳と多言語サポート: 優れた二言語対応モデルが利用できることもあり、安定したユースケースです(中国 OSS モデルはこの分野で優位性があります)。 一般知識の Q&A と教育: 利用は中程度で、オープンモデルでも質問に回答できますが、事実の正確性を最優先する場合、ユーザーは GPT-5 のようなクローズドモデルを好む可能性があります。
OSS の利用傾向(ロールプレイが中心)は、多くの人が「愛好家」や「個人開発者」向けと考える領域、つまり絶対的な正確さよりもカスタマイズ性や費用対効果が優先される領域と一致している点に注目する価値があります。ただし、その境界は曖昧になっており、OSS モデルは技術分野で急速に進歩し、プロプライエタリモデルも創造的に活用されています。
エージェント型推論の台頭
前のセクションで見たモデルの勢力図の変化(オープンソース対クローズドソース)を踏まえ、ここでは LLM の利用そのものの基本的な 形態 に注目します。本番環境における言語モデルの利用方法は、単一ターンのテキスト補完から、複数ステップでツールを統合し、推論を多用するワークフローへと根本的に変化しつつあります。この変化を エージェント型推論の台頭と呼び、モデルは単にテキストを生成するだけでなく、計画の立案、ツールの呼び出し、長いコンテキストにわたるやり取りを通じて行動するために利用されます。このセクションでは、推論モデルの台頭、ツール呼び出し動作の拡大、シーケンス長の分布の変化、プログラミング用途が複雑性を高める仕組みという五つの指標を通じて、この変化をたどります。
推論モデルが全利用量の半分を占めるようになりました

上の図に示すように、推論に最適化されたモデルにルーティングされるトークンが全体に占める割合は、2025 年に急増しました。第 1 四半期の初めには実質的に無視できるほどだった使用量の割合が、現在では五十パーセントを超えています。この変化は市場の供給側と需要側の両方を反映しています。供給側では、 GPT-5、 Claude 4.5、 Gemini 3 などのより高性能なシステムのリリースにより、段階的な推論に期待できることが広がりました。需要側では、単にテキストを生成するだけでなく、タスクの状態を管理し、複数段階のロジックに従い、エージェント型のワークフローを支援できるモデルをユーザーがますます好むようになっています。

上の図は、この変化を牽引する主要モデルを示しています。最新のデータでは、xAI の Grok Code Fast 1 は現在、Google の Gemini 2.5 Pro や Gemini 2.5 Flash を上回り、推論トラフィックで最大のシェアを占めています(リリース時の無料アクセスを除きます)。これは、わずか数週間前には Gemini 2.5 Pro がこのカテゴリーをリードし、 DeepSeek R1 や Qwen3 も上位に入っていた状況からの顕著な変化です。 Grok Code Fast 1 と Grok 4 Fast は、xAI の積極的な展開、競争力のある価格設定、コード特化型の派生モデルに対する開発者の関心に支えられ、急速にシェアを拡大しています。同時に、OpenAI の gpt-oss-120b のようなオープンモデルが引き続き存在感を示していることは、開発者が今も可能な場合には OSS を選んでいることを裏付けています。全体的な構成は、モデルの急速な入れ替わりが実際のワークロードで主流となるシステムを左右するなど、推論分野がいかに流動的になっているかを浮き彫りにしています。
データは明確な結論を示しており、推論重視のモデルが実際のワークロードにおける標準的な選択肢となりつつあり、それらを通じて処理されるトークンの割合は、ユーザーが AI システムとどのようにやり取りしたいかを示す先行指標となっています。
ツール呼び出しの採用拡大

上の図では、終了理由が ツール呼び出し だったリクエストに由来するトークンが、総トークン数に占める割合を示しています。この指標は正規化されており、実際にツールが呼び出されたやり取りのみを対象としています。
これは、リクエスト中にモデルにツールが提供されたかどうかを記録する 入力ツール シグナル(呼び出しの有無は問いません)とは対照的です。ツールの提供は実行成功の上位集合であるため、定義上、入力ツールの件数は終了理由がツール呼び出しである件数を上回ります。終了理由の指標が実際のツール使用を測定するのに対し、入力ツールは実際の呼び出しではなく、潜在的な利用可能性を反映します。この指標は 2025 年 9 月に導入されたばかりのため、本論文では報告していません。
上の図に見られる 5 月の顕著な急増は、主に大規模なアカウントのアクティビティが全体の利用量を一時的に押し上げたことによるものです。この例外を除くと、ツールの採用は年間を通じて一貫した増加傾向を示しています。

上図に示すように、当初ツール呼び出しは OpenAI の gpt-4o-mini と Anthropic の Claude 3.5 と 3.7 シリーズという少数のモデルに集中しており、これらが 2025 年初頭のツール対応トークンの大部分を占めていましたが、年半ばには、より幅広いモデルがツール提供に対応し始め、エコシステムの競争と多様化が進んでいることが示されました。9 月末以降は、新しい Claude 4.5 Sonnet モデルが急速にシェアを伸ばしました。一方、 Grok Code Fast や GLM 4.5 などの新しいモデルも目に見える進展を遂げており、ツール対応のデプロイメントで実験と多様化が広がっていることが示されています。
運用者にとっての示唆は明確で、高価値のワークフローでツール利用を有効にする動きが広がっています。信頼性の高いツール形式に対応していないモデルは、企業での導入やオーケストレーション環境において後れを取るリスクがあります。
プロンプトと補完の形状の構造



モデルのワークロードの構成は、この一年で大きく変化しました。プロンプト(入力)とコンプリーション(出力)のトークン量は、規模と速度こそ異なりますが、どちらも急増しています。リクエストあたりの平均プロンプトトークン数は約 1.5K から 6K 超へと約四倍に増加し、コンプリーションは約 150 トークンから 400 トークンへとほぼ三倍になっています。これらの増加幅の違いは、より複雑でコンテキストが豊富なワークロードへの明確な移行を示しています。
このパターンは、モデル利用における新たな均衡を反映しています。現在の典型的なリクエストは、自由形式の生成(「エッセイを書いてください」)よりも、コードベース、ドキュメント、文字起こし、長い会話など、ユーザーが提供する大量の資料について推論し、簡潔で価値の高い洞察を生み出すことに重点を置いています。モデルは、創造的な生成器よりも分析エンジンとして機能するようになっています。
カテゴリ別データ(2025 年春以降のみ利用可能)からは、プログラミングのワークロードがプロンプトトークン増加の主な要因であるという、より詳細な状況がわかります。コード理解、デバッグ、コード生成を伴うリクエストは日常的に入力トークン数が 20K を超える一方、その他のカテゴリはすべて比較的横ばいで、少量にとどまっています。この偏った寄与は、最近のプロンプトサイズの拡大がタスク全体で一様に起きている傾向ではなく、ソフトウェア開発や技術的推論のユースケースに集中した急増であることを示唆しています。
より長いシーケンス、より複雑なやり取り


シーケンス長は、タスクの複雑さと対話の深さを示す指標です。上の図は、過去 20 か月間で平均シーケンス長が 3 倍を超えて増加し、2023 年末の 2,000 トークン未満から 2025 年末には 5,400 トークン超になったことを示しています。この増加は、より長いコンテキストウィンドウ、より深いタスク履歴、より精緻な補完への構造的な移行を反映しています。
前のセクションで述べたとおり、二つ目の図からさらに明確になるのは、プログラミング関連のプロンプトの平均トークン長が、現在では汎用プロンプトの 3–4 倍になっていることです。この乖離は、ソフトウェア開発のワークフローが対話の長期化を推進する主な要因であることを示しています。長いシーケンスは単にユーザーが冗長に記述した結果ではなく、組み込まれた、より高度なエージェント型ワークフローの特徴です。
示唆:エージェント型推論が新たな標準に
これらの傾向(推論の割合の増加、ツール利用の拡大、シーケンスの長期化、プログラミングの突出した複雑さ)を総合すると、LLM 利用の重心が移動したことがうかがえます。典型的な LLM リクエストは、もはや単純な質問や単独の指示ではありません。代わりに、外部ツールを呼び出し、状態について推論し、より長いコンテキストにわたって持続する、構造化されたエージェント的なループの一部となっています。
モデルプロバイダーにとって、これは標準機能に求められる水準の引き上げを意味します。レイテンシ、ツール処理、コンテキストのサポート、不正な形式や敵対的なツールチェーンに対する堅牢性が、ますます重要になっています。インフラ運用者にとって、推論プラットフォームでは、ステートレスなリクエストだけでなく、長時間続く会話、実行トレース、権限に配慮が必要なツール連携も管理する必要があります。 すでにそうなっていないとしても、近いうちにエージェント型推論が推論の大半を占めるようになります。
カテゴリー:LLM はどのように使われていますか?
ユーザーが LLM で行うタスクの分布を理解することは、実際の需要と モデルと市場の適合性を評価するうえで重要です。データと方法論のセクションで説明したとおり、数十億件のモデルとのやり取りを大まかなアプリケーションカテゴリに分類しました。オープンソースモデルとクローズドソースモデルのセクションでは、コミュニティ主導の利用状況を把握するため、オープンソースモデルに焦点を当てました。ここでは、人々が実際に何のために LLM を利用しているかを包括的に把握するため、対象を OpenRouter 上の すべて の LLM 利用(クローズドモデルとオープンモデルの両方)に広げます。
主要カテゴリー

プログラミングは、すべてのモデルを通じて最も一貫して拡大しているカテゴリとなっています。プログラミング関連のリクエストの割合は、LLM 支援型の開発環境やツール連携の普及と並行して、2025 年を通じて着実に増加しています。上の図に示すように、プログラミングに関するクエリは 2025 年初頭には総トークン量の約 11% を占め、直近の数週間では 50% を超えました。この傾向は、探索的な利用や会話での利用から、コード生成、デバッグ、データ処理スクリプトの作成といった実務的なタスクへの移行を反映しています。LLM が開発者のワークフローに組み込まれるにつれ、プログラミングツールとしての役割が一般化しています。この変化はモデル開発にも影響を及ぼしており、コード中心のトレーニングデータの重視、複数ステップのプログラミングタスクにおける推論の深化、モデルと統合開発環境の間のフィードバックループの緊密化につながっています。
プログラミング支援に対する需要の拡大により、モデルプロバイダー間の競争環境が変化しています。下図に示すとおり、Anthropic の Claude シリーズは一貫してこのカテゴリーを主導し、観測期間の大半でプログラミング関連支出の 60% 超を占めています。それでも、勢力図には大きな変化が生じています。11 月 17 日の週には、Anthropic のシェアが初めて 60% を下回りました。7 月以降、OpenAI はシェアを約 2% から直近の数週間では約 8% に拡大しており、開発者向けワークロードを再び重視していることが反映されていると考えられます。同じ期間、Google のシェアは約 15% で安定しています。中位層にも動きが見られます。Z.AI、Qwen、Mistral AI などのオープンソースプロバイダーは、着実に注目度を高めています。特に MiniMax は急成長する新規参入者として台頭し、直近の数週間で顕著な伸びを見せています。

全体として、 プログラミングは、競争が特に激しく、戦略的に重要なモデルカテゴリーの一つとなっています。主要な研究機関から継続的に注目を集めており、モデルの品質やレイテンシーのわずかな変化でも、週ごとのシェアが変動する可能性があります。インフラプロバイダーや開発者にとって、これは継続的なベンチマークと評価の必要性を示しており、特に最先端が絶えず進化している中では重要です。
カテゴリ内のタグ構成


上の図は、最も一般的な十二のコンテンツカテゴリにわたる LLM の利用状況を分類し、各カテゴリ内のサブトピック構造を示しています。重要なのは、ほとんどのカテゴリで利用が均等に分布しておらず、一つか二つの繰り返し現れる利用パターンが大半を占め、多くの場合、ユーザーの意図の集中や LLM の得意分野との一致を反映しているという点です。
利用量が最も多いカテゴリーの中で、 ロールプレイ は一貫性と専門性が際立っています。ロールプレイのトークンの約 60% が ゲーム/ロールプレイングゲームに分類されており、ユーザーが LLM を気軽なチャットボットというよりも、構造化されたロールプレイやキャラクターのエンジンとして扱っていることがうかがえます。この傾向は、 執筆者向けリソース (15.6%)と 成人向け コンテンツ(15.4%)の存在によってさらに裏付けられ、インタラクティブフィクション、シナリオ生成、個人的な空想が融合していることを示しています。ロールプレイは主に気軽な対話であるという想定に反し、データは明確に定義された再現可能なジャンル別のユースケースを示しています。
プログラミング も同様に偏っており、トラフィックの三分の二以上が プログラミング/その他 に分類されています。これは、コード関連のプロンプトが幅広く汎用的であることを示しており、ユーザーは特定のツールや言語に狭く焦点を絞るのではなく、ロジックのデバッグからスクリプトの作成まで、あらゆることを LLM に依頼しています。ただし、 開発ツール (26.4%)や、スクリプト言語が占める小さな割合は、専門化の兆しを示しています。この細分化は、モデル開発者にとって、構造化されたプログラミングワークフローに関するタグ付けや学習を改善する機会があることを示しています。
主要なカテゴリであるロールプレイとプログラミング以外の領域は、LLM 利用の多様ながらも利用量の少ないロングテールを構成しています。個々の規模は小さいものの、専門的なタスクや新たなタスクでユーザーがモデルとどのようにやり取りするかについて、重要な傾向を示しています。たとえば、 翻訳、 科学、および 健康 は、内部構成が比較的均等です。翻訳では、利用がほぼ均等に分かれているのは 外国語リソース (51.1%)と その他であり、継続的な文書単位の翻訳よりも、多言語での調べもの、言い換え、簡単な言語の切り替えといった幅広いニーズがあることを示唆しています。科学では、単一のタグである 機械学習と AI (80.4%)が大半を占めており、科学に関する質問の多くは、物理学や生物学のような一般的な STEM 分野ではなく、AI 自体についての質問であることを示しています。これは、ユーザーの関心またはモデルの強みが自己言及的な問いに偏っていることを反映しています。
対照的に、健康は上位カテゴリーの中で最も細分化されており、25% を超えるサブタグはありません。トークンは医学研究、カウンセリングサービス、治療ガイダンス、診断情報の検索に分散しています。この多様性は、この領域の複雑さだけでなく、安全にモデル化することの難しさも浮き彫りにしており、LLM は、単一のユースケースに明確に集中することなく、多くの場合センシティブな状況で、大きく異なるユーザーの意図に幅広く対応する必要があります。
これらのロングテールカテゴリーに共通するのは、その幅広さであり、ユーザーは探索的なやり取りや、構造が緩やかなやり取り、支援を求めるやり取りに LLM を利用していますが、プログラミングやパーソナルアシスタントに見られるような、目的の明確なワークフローはありません。これらの副次的なカテゴリーは、全体として利用量の中心ではないかもしれませんが、潜在的な需要を示唆しています。翻訳から医療に関する助言、AI の内省まで、多くの分野の周辺領域で LLM が使われていることを示しており、モデルの各分野での堅牢性とツール統合が向上するにつれて、こうした散在する意図が、より明確で利用量の多いアプリケーションへと集約される可能性があります。
対照的に、 金融、 学術、および 法律 は、はるかに分散しています。金融では、外国為替、社会的責任投資、監査・会計に利用量が分散しており、20% を超えるタグはありません。法律も同様の分散傾向を示し、利用は 政府/その他 (43.0%)と 法律/その他 (17.8%)に分かれています。この細分化は、これらの分野の複雑さを反映しているか、あるいは単に、コーディングやチャットのような成熟したカテゴリーと比べて、これらに特化した LLM ワークフローが不足していることを示している可能性があります。
データからは、実世界での LLM の利用は一様に探索的なものではなく、反復可能で大量に実行される少数のタスクに強く集中していることが示唆されます。ロールプレイ、プログラミング、個人的な支援には、それぞれ明確な構造と主要なタグが見られます。対照的に、科学、健康、法律の分野はより分散しており、最適化が十分でない可能性があります。こうした内部の分布は、モデル設計、ドメイン固有のファインチューニング、アプリケーションレベルのインターフェース、特にユーザーの目的に合わせた LLM の調整の指針となります。
地理:地域による LLM 利用の違い
世界の LLM 利用には顕著な地域差が見られます。地域別の内訳を調べることで、各地域の利用と支出が LLM の利用パターンにどう影響するかを推測できます。以下の数値は OpenRouter のユーザー層を反映したものですが、地域別の利用状況の一端を示しています。
使用量の地域別分布
下図に示す支出の分布は、AI 推論市場のグローバル化がますます進んでいることを浮き彫りにしています。北米は依然として最大の地域ですが、観測期間の大半で総支出に占める割合が半分を下回っています。欧州は安定した持続的な貢献を示しています。週間支出に占める相対的な割合は期間全体を通じて一貫しており、通常は十数%台半ばから二十%台前半の範囲で推移しています。注目すべき動きは、アジアが最先端モデルの生産地としてだけでなく、急速に拡大する消費地としても台頭していることです。データセットの最初の数週間では、アジアは世界の支出のおよそ十三%を占めていました。時間の経過とともにこの割合は倍以上になり、直近の期間では約 31% に達しています。

| 大陸 | シェア(%) |
|---|---|
| 北米 | 47.22 |
| アジア | 28.61 |
| ヨーロッパ | 21.32 |
| オセアニア | 1.18 |
| 南米 | 1.21 |
| アフリカ | 0.46 |
| 国 | シェア(%) |
|---|---|
| 米国 | 47.17 |
| シンガポール | 9.21 |
| ドイツ | 7.51 |
| 中国 | 6.01 |
| 韓国 | 2.88 |
| オランダ | 2.65 |
| 英国 | 2.52 |
| カナダ | 1.90 |
| 日本 | 1.77 |
| インド | 1.62 |
| その他(60 か国以上) | 16.76 |
言語分布
| 言語 | トークンシェア(%) |
|---|---|
| 英語 | 82.87 |
| 中国語(簡体字) | 4.95 |
| ロシア語 | 2.47 |
| スペイン語 | 1.43 |
| タイ語 | 1.03 |
| その他(合計) | 7.25 |
上の表に示すように、使用量では英語が圧倒的に多く、全トークンの 80% 以上を占めています。これは、英語モデルの普及と、OpenRouter のユーザー層が開発者中心であることの両方を反映しています。しかし、他の言語、特に中国語、ロシア語、スペイン語も、無視できない割合を占めています。簡体字中国語だけで世界全体のトークンの約 5% を占めており、特に DeepSeek や Qwen などの中国 OSS モデルの成長を踏まえると、バイリンガル環境や中国語を主に使う環境のユーザーによる継続的な利用がうかがえます。
LLM の導入が世界規模で進むと同時に地域ごとに最適化される中、モデル開発者やインフラ運用者にとって、言語、コンプライアンス制度、デプロイ環境をまたぐ地域横断的な使いやすさは、必須条件になりつつあります。
LLM ユーザーの継続率の分析
シンデレラの「ガラスの靴」現象








コホート継続率です。継続率は アクティビティ継続率 として測定され、非アクティブな期間があっても後続の月に戻ってきたユーザーを集計するため、曲線には単調減少しない小さな上昇が現れることがあります。
これらのリテンションチャートは、主要モデルにおける LLM ユーザー市場の動向を捉えています。一見すると、このデータでは高い離脱率と急速なコホートの縮小が目立ちます。しかし、この変動の下には、より目立たず、より重要な兆候があり、少数の初期ユーザーコホートは長期にわたって持続的なリテンションを示しています。これらを 基盤コホートと呼びます。
これらのコホートは単なるアーリーアダプターではなく、ワークロードが深く持続的な適合を達成したユーザーを表しており、その適合とは、 ワークロードとモデルの適合です。この適合はいったん確立されると、より新しいモデルが登場しても、代替を阻む経済的・認知的な慣性を生み出します。
この現象を説明する枠組みとして、シンデレラの ガラスの靴効果 を導入します。この仮説では、急速に進化する AI エコシステムにおいて、モデルが世代を重ねても未解決のまま残る高価値ワークロードの潜在的な分布が存在すると考えます。新しい最先端モデルは、その都度、これらの未解決の問題に対して、いわば「試着」されます。新たにリリースされたモデルが、これまで満たされなかった技術的・経済的制約にたまたま合致すると、比喩的な「ガラスの靴」のように、ぴったりと適合します。
ワークロードがようやく「適合」した開発者や組織にとって、この適合は強力なロックイン効果を生みます。システム、データパイプライン、ユーザー体験は、最初に問題を解決したモデルに根ざしたものになります。コストが低下し、信頼性が高まるにつれて、プラットフォームを移行する動機は急速に弱まります。一方、そのような適合が見つからないワークロードでは、独自の解決策を求めてモデル間を移行する探索が続きます。
実証的には、このパターンは 2025 年 6 月の Gemini 2.5 Pro のコホートと 2025 年 5 月の Claude 4 Sonnet のコホートで観察され、これらは 5 か月目でも約 40% のユーザーを維持しており、後続のコホートを大幅に上回っています。これらのコホートは、以前は不可能だったワークロードをついに実現した特定の技術的ブレークスルー(推論の忠実性やツール使用の安定性など)に対応していると考えられます。
- 持続的な優位性としての最初の課題解決。 重要なワークロードを最初に 解決 するモデルでは、従来の先行者優位が重要性を増します。初期の採用者はパイプライン、インフラ、ユーザーの行動全体にモデルを組み込むため、切り替えに大きな摩擦が生じます。これにより、新たな代替モデルが登場しても、そのモデルが基盤となるコホートを維持する安定した均衡が生まれます。
- 能力の変曲点を示す指標としての継続率。 コホート単位の継続率のパターンは、モデルの差別化を示す実証的なシグナルとなります。初期のコホートのいずれかで継続率が持続している場合、ある種類のワークロードが実現不可能から実現可能へと移行する、意味のある能力の変曲点を示しています。そのようなパターンがない場合、能力が同等で、差別化の深さが限られていることを示唆します。
- 最先端のモデルが優位に立てる期間の時間的制約。 競争環境によって、モデルが基盤となるユーザーを獲得できる期間は短く限られます。後続のモデルが能力の差を縮めるにつれて、新たな基盤コホートを形成する確率は急激に低下します。したがって、モデルとワークロードが正確に合致する「シンデレラ」の瞬間は、一時的でありながら長期的な採用動向を決定づけます。
総じて、基盤モデルの能力が急速に変化する中で、ユーザーリテンションの再定義が必要です。新世代のモデルが登場するたびに、それまで対応できなかったワークロードを解決する短い機会が生まれます。こうした適合が生じると、該当するユーザーは 基盤コホートを形成し、そのリテンションの推移は、その後に新たなモデルが登場しても安定したままです。
リリース時の支配的な地位という特異現象。 この OpenAI GPT-4o Mini のグラフは、この現象が極端に現れた例を示しています。単一の初期コホート(2024 年 7 月、オレンジの線)が、リリース時にワークロードとモデルの間で支配的かつ定着性の高い適合を確立しました。その後のコホートはすべて、この適合が確立され、市場が次の段階に進んだ 後 に登場したものであり、同じ挙動を示し、離脱して最下部に集中しています。このことは、こうした基盤となる適合を確立できる機会は一度きりで、モデルが「フロンティア」と認識される瞬間にしか訪れないことを示唆しています。
適合しないことの帰結。 この Gemini 2.0 Flash と Llama 4 Maverick のグラフは、この初期の適合が確立されない場合に何が起こるかを示す教訓となっています。他のモデルとは異なり、高いパフォーマンスを示す基盤となるコホートが存在しません。すべてのコホートが同じように低いパフォーマンスを示しています。これは、これらのモデルが、高価値で継続利用されるワークロードにおける「最先端」として認識されなかったことを示唆しています。最初から 十分な性能でよしとする 市場に投入されたため、ユーザー基盤をまったく定着させられませんでした。同様に、全体としては圧倒的な成功を収めた DeepSeek の乱雑なグラフでも、安定した基盤となるコホートを確立するのに苦戦しています。
ブーメラン効果。 DeepSeek モデルでは、より複雑なパターンが見られます。その継続率曲線には、非常に珍しい異常として、 復帰による急上昇が見られます。通常の単調に減少する継続率とは異なり、DeepSeek のいくつかのコホートでは、初期の離脱期間の後に継続率が明確に上昇しています(例: DeepSeek R1 の 2025 年 4 月のコホートでは約 3 か月目、 DeepSeek Chat V3-0324 の 2025 年 7 月のコホートでは約 2 か月目)。これは、離脱したユーザーの一部がモデルに戻っていることを示しています。この「ブーメラン効果」は、これらのユーザーが代替モデルを試し、比較テストを通じて、専門的な技術性能、コスト効率、その他の独自機能の優れた組み合わせにより、DeepSeek が特定のワークロードに最適で、多くの場合はより適していると確認した後、DeepSeek に戻っていることを示唆しています。
示唆。 この ガラスの靴 という現象は、リテンションを結果ではなく、能力の飛躍的進歩を理解するための視点として捉え直します。基盤となるコホートは真の技術的進歩の痕跡であり、AI モデルが目新しいものから不可欠なものへと変わった地点を示します。開発者と投資家の双方にとって、これらのコホートを早期に特定することは、モデルと市場の間で持続的な優位性を予測するうえで最も有力な単一の指標となる可能性があります。
コストと使用量の動向
モデルの利用コストは、ユーザーの行動に影響する重要な要因です。このセクションでは、さまざまな AI ワークロードのカテゴリが、コストと利用量の分布においてどのように位置しているかに注目します。コストと利用量の両対数プロットでカテゴリが集中する場所を調べることで、低コスト・大量利用の領域と高コスト・専門用途の領域にワークロードが集中するパターンを特定します。また、低コストのカテゴリほど総利用量が多い傾向があるという点で、ジェボンズのパラドックスの効果との類似性にも言及しますが、このパラドックスや因果関係を正式に分析することは試みていません。
カテゴリー別の AI ワークロード分類の分析

上の散布図は、集計された使用量(総トークン数)と単位コスト(1M トークンあたりのコスト)に基づいて AI のユースケースを配置し、その明確な区分を示しています。まず注目すべき重要な点は、両軸が対数目盛であることです。この対数目盛では、グラフ上のわずかな距離が、実際の使用量とコストにおける大きな倍率の差に対応します。
グラフはコストの中央値である 1M トークンあたり $0.73の位置にある垂直線で二分され、実質的に四象限の枠組みを形成することで、カテゴリー全体の AI 市場をわかりやすくしています。
これらの最終的なコストは、公表されている定価とは異なる点にご注意ください。高頻度のワークロードではキャッシュの恩恵により実際の支出が抑えられ、実効価格は公表価格よりも大幅に低くなります。表示されるコスト指標はプロンプトトークンと補完トークンの両方を合わせた単価を反映しており、ユーザーが実際に支払う総額をより正確に把握できます。また、このデータセットでは、標準化されたプラットフォーム経由の利用を切り分け、カスタムインフラ構成による偏りを避けるため、BYOK のアクティビティを除外しています。
プレミアムワークロード(右上): この象限には高コストで利用量の多いアプリケーションが含まれ、現在では technology と science が交点に位置しています。これらは価値が高く、頻繁に利用される業務用ワークロードであり、ユーザーは性能や専門的な機能のために割増料金を支払う意向があります。 Technology は顕著な外れ値であり、他のどのカテゴリよりも大幅に高額です。これは、 technology というユースケース(複雑なシステム設計やアーキテクチャに関連する可能性があります)では、推論に際してはるかに強力で高価なモデルが必要となる可能性がある一方で、高い利用量を維持しており、その不可欠さを示していることを示唆しています。
マスマーケットの利用量を牽引するモデル(左上): この象限は、利用量が多く、コストが平均以下と低いことが特徴です。この領域を占める大規模なユースケースは二つで、 roleplay、 programming 、および science です。
Programmingは「キラープロフェッショナル」カテゴリーとして際立っており、高度に最適化された中央値のコストで、最も多い利用量を示しています。Roleplayの利用量は膨大で、ほぼprogrammingに匹敵します。これは注目すべき知見で、消費者向けのロールプレイアプリケーションが、トップクラスのプロフェッショナル向けアプリケーションと同等のエンゲージメント量を生み出しています。
この二つのカテゴリーの圧倒的な規模は、業務の生産性向上と会話型エンターテインメントの両方が、AI の主要かつ巨大な推進力であることを裏付けています。この象限のコスト感度こそが、前述のとおり、オープンソースモデルが大きな優位性を見いだしている部分です。
専門分野のエキスパート(右下): この象限には、利用量が少なくコストが高い用途が含まれ、その例が finance、 academia、 health、および marketing です。これらは、重大な判断を伴うニッチな専門領域です。「プログラミング」に比べて「健康」や「金融」について AI に相談する頻度ははるかに低いと考えられるため、全体の利用量が少ないのは理にかなっています。これらのタスクでは、正確性、信頼性、分野固有の知識に対する要求が極めて高いことが理由と考えられ、ユーザーは大幅に高い料金を支払うことをいといません。
ニッチなユーティリティ(左下): この象限は低コスト・低ボリュームのタスクを扱い、その例は translation、 legal、および trivia です。これらは機能的で、コストが最適化されたユーティリティです。 Translation はこのグループ内で最もボリュームが多い一方、 trivia は最も少ないです。低コストでボリュームも比較的少ないことから、これらのタスクは高度に最適化されているか、「解決済み」であるか、十分な品質の代替手段を安価に利用できるコモディティになっている可能性があります。
前述のとおり、このグラフで最も顕著な外れ値は technology です。高い利用量を維持しながら、トークンあたりのコストは他を大きく引き離して最も高くなっています。これは、価値が高く複雑な回答(システムアーキテクチャ、高度な技術的問題解決など)に対して、高い支払い意欲を持つ市場セグメントがあることを強く示唆しています。重要な問いの一つは、この高価格が高いユーザー価値(「需要側」の機会)によるものか、それとも高いサービス提供コスト(「供給側」の課題)によるものかという点で、こうしたクエリには最も強力なフロンティアモデルが必要になる可能性があります。 technology における「勝ち筋」は、この高付加価値市場にサービスを提供することです。たとえば高度に最適化された特化型モデルを通じて、このセグメントに対応できるプロバイダーは、より高い利益率が見込める市場を獲得できる可能性があります。
AI モデルの実効コストと使用量の比較

上の図は、モデルの使用量と 1M トークンあたりのコストの関係を両対数スケールで示しており、全体的な相関は弱いことがわかります。横軸には便宜上、名目値を表示しています。トレンドラインはほぼ水平で、需要の価格弾力性が比較的低いことを示しており、価格が 10% 下がっても、使用量の増加は約 0.5~0.7% にとどまります。一方、グラフ全体のばらつきは大きく、市場が明確に分かれていることを反映しています。明確に異なる二つの領域が見られ、OpenAI と Anthropic のプロプライエタリモデルは高コスト・高使用量の領域を占める一方、DeepSeek、Mistral、Qwen などのオープンモデルは低コスト・大量利用の領域に分布しています。このパターンは、次のシンプルな経験則を裏付けています: クローズドソースモデルは価値の高いタスクを獲得し、オープンソースモデルは価値がより低く量の多いタスクを獲得しています。 価格弾力性の低さは、大幅なコスト差があっても需要が完全には移行しないことを示しており、プロプライエタリモデルのプロバイダーはミッションクリティカルな用途で価格決定力を維持する一方、オープンなエコシステムはコストに敏感なユーザーからの利用量を吸収しています。

| セグメント | モデル | 1M あたりの価格 | 使用量(対数) | 要点 |
|---|---|---|---|---|
| 高効率の巨大モデル | google/gemini-2.0-flash | $0.147 | 6.68 | 低価格と強力な流通網により、大量処理の定番モデルとなっています |
| 高効率の巨大モデル | deepseek/deepseek-v3-0324 | $0.394 | 6.55 | 競争力のある品質と格安のコストが大規模な導入を促進しています |
| プレミアム分野のリーダー | anthropic/claude-3.7-sonnet | $1.963 | 6.87 | 高価格にもかかわらず利用量が非常に多く、品質と信頼性が重視されていることを示しています |
| プレミアム分野のリーダー | anthropic/claude-sonnet-4 | $1.937 | 6.84 | 企業のワークロードでは、信頼できる最先端モデルへの需要は価格に左右されにくいようです |
| ロングテール | qwen/qwen-2-7b-instruct | $0.052 | 2.91 | 最低水準の価格でも普及は限定的で、モデルと市場の適合性が低いためと考えられます |
| ロングテール | ibm/granite-4.0-micro | $0.036 | 2.95 | 低価格ながらニッチなモデルで、主に限られた環境で使用されています |
| プレミアム分野の特化型モデル | openai/gpt-4 | $34.068 | 3.53 | 高コストで利用量は中程度にとどまり、最も要求の厳しいタスクに限定して使用されています |
| プレミアム分野の特化型モデル | openai/gpt-5-pro | $34.965 | 3.42 | 特定の重要なワークロードに対応する超高価格帯のモデルです。リリースから間もないため、まだ導入の初期段階にあります。 |
上の図は前の図と似ていますが、モデルの開発元を表示しています。利用量とコストの関係には、四つの典型的なパターンが見られます。 プレミアムリーダーに該当する Anthropic の Claude 3.7 Sonnet や Claude Sonnet 4 は、1M トークンあたり約 $2 という価格でも高い利用量を維持しており、優れた推論能力と大規模運用での信頼性に対して、ユーザーが対価を払う意思があることを示しています。 効率的な大規模モデルに該当する Google の Gemini 2.0 Flash や DeepSeek V3 0324 は、高い性能と 1M トークンあたり $0.40 未満の価格を両立し、同程度の利用量を達成しているため、大量処理や長いコンテキストを扱うワークロードのデフォルトとして魅力的です。 ロングテール のモデルには Qwen 2 7B Instruct や IBM Granite 4.0 Micro が含まれ、1M トークンあたりわずか数セントという価格でも総利用量は 10^2.9 前後にとどまっており、性能の低さ、認知度の低さ、連携の少なさによる制約を反映しています。最後に、 プレミアム特化型モデルに該当する OpenAI の GPT-4 や GPT-5 Pro は、高コスト・低利用量の領域に位置し、1M トークンあたり約 $35、利用量は 10^3.4 前後で、トークンの限界費用よりも出力品質がはるかに重視される、専門的で失敗の許されないワークロードに限定的に使用されています。
全体として、この散布図は LLM 市場の価格決定力が一様ではないことを示しています。低価格モデルは効率性と統合によって規模を拡大できる一方、重要性の高い用途ではプレミアムモデルへの需要も依然として堅調です。この市場の分断は、市場がまだコモディティ化しておらず、レイテンシ、コンテキスト長、出力品質などによる差別化が、引き続き戦略的優位性の源泉であることを示唆しています。
これらの観察から、次のことが示唆されます:
- マクロレベルでは、 需要は非弾力的ですが、その背後には異なるミクロの行動があります。ミッションクリティカルなタスクを抱える企業は高額でも支払います(そのため、これらのモデルの利用量は多くなります)。一方、趣味で利用するユーザーや開発パイプラインはコストに非常に敏感で、より安価なモデルに集まります(その結果、効率的なモデルの利用量が大きくなります)。
- 次のように、 ジェヴォンズのパラドックスを示す証拠もあり、一部のモデルが非常に安価(かつ高速)になったことで、はるかに多くのタスクに使われるようになり、最終的にトークンの総消費量が増加しました。この現象は効率性に優れた巨大モデル群に見られ、トークンあたりのコストが下がるにつれて、これらのモデルがあらゆる場所に組み込まれ、総消費量が急増しました(より長いコンテキストや、より多くの反復処理などが使われています)。
- 品質と機能はコストを上回る決め手になることが多く、 高価なモデル(Claude、GPT-4)の利用量が多いことは、モデルが大幅に優れているか信頼性で優位にある場合、ユーザーが高いコストを受け入れることを示しています。こうしたモデルは多くの場合、生成されるものの価値に比べてコストがごくわずかなワークフローに組み込まれています(たとえば、開発者の作業時間を一時間節約できるコードには、数ドルの API 呼び出しをはるかに上回る価値があります)。
- 逆に、単に安価なだけでは不十分で、モデルには 差別化と十分な能力も必要です。価格がほぼゼロのオープンモデルの多くは、最低限の性能は備えていても、 ワークロードとモデルの適合性 を見いだせないか、信頼性がやや不足しているため、開発者は深く組み込むことをためらいます。
運用者の観点からは、いくつかの戦略的なパターンが見えてきます。Google などのプロバイダーは、速度、コスト、能力のトレードオフを明確にした階層型の製品展開(特に Gemini Flash と Pro)に注力してきました。この階層化により、価格感度とタスクの重要度に応じた市場の細分化が可能になり、軽量なタスクは安価で高速なモデルにルーティングされ、高級モデルは複雑なワークロードやレイテンシーを許容できるワークロードを処理します。ユースケースと信頼性に合わせた最適化は、価格の「引き下げ」と同程度の効果をもたらすことがよくあります。特に本番環境では、安価でも予測しにくいモデルより、高速で特定の用途に特化したモデルが好まれる場合があります。これにより、重視される指標はトークンあたりのコストから、成果を得るためのコストへと移ります。 需要の価格弾力性が比較的低いことは、LLM がまだコモディティ化していないことを示しており、多くのユーザーは品質、能力、安定性のために割増料金を支払う意思があります。 特にトークンのわずかな節約よりもタスクの成果が重要な場合、差別化には依然として価値があります。
ディスカッション
この実証研究は、LLM が実際にどのように利用されているかについてデータに基づく視点を提供し、AI 導入に関する従来の通念に新たなニュアンスを加えるいくつかのテーマを明らかにしています:
1. マルチモデルのエコシステム。 分析によると、単一のモデルがすべての用途を支配しているわけではありません。むしろ、豊かな マルチモデルのエコシステム において、クローズドモデルとオープンモデルの両方が大きなシェアを獲得しています。たとえば、OpenAI や Anthropic のモデルが多くのプログラミングタスクや知識タスクで主導している一方で、DeepSeek や Qwen などのオープンソースモデルも、合計で総トークン数の大きな割合(時には 30% 超)を処理しています。このことは、今後の LLM 利用が特定のモデルに依存せず、多様なモデルが混在する形になる可能性を示唆しています。開発者にとっては、単一モデルの優位性にすべてを賭けるのではなく、柔軟性を維持し、複数のモデルを統合して、各作業に最適なモデルを選ぶことを意味します。モデルのプロバイダーにとっては、予想外のところから競争相手が現れ得ることを強調しています(たとえば、継続的に改善と差別化を図らなければ、コミュニティモデルに市場の一部を奪われる可能性があります)。
2. 生産性にとどまらない用途の多様性。 驚くべき発見は、非常に多くの利用が ロールプレイやエンターテインメントを目的としていることです。オープンソースモデルの利用の半数以上は、ロールプレイや物語の創作を目的としていました。プロプライエタリなプラットフォームでも、業務用途が拡大する前の初期の ChatGPT 利用では、気軽な用途や創作が無視できない割合を占めていました。これは、LLM は主にコード、メール、要約の作成に使われるという想定に反します。実際には、多くのユーザーが話し相手を求めたり、探索したりするためにこれらのモデルを利用しています。これには重要な示唆があります。物語の設計、感情的な関わり、インタラクティブ性を融合した消費者向けアプリケーションに、大きな機会があることを示しています。個性を発展させ、好みを記憶し、長期にわたるやり取りを維持するエージェントなど、パーソナライズの新たな領域も示唆しています。モデルの評価指標も再定義され、成功を左右するのは、事実の正確さよりも、一貫性、整合性、魅力的な対話を維持する能力かもしれません。最後に、AI とエンターテインメント IP の融合への道も開かれ、インタラクティブな物語、ゲーム、クリエイター主導のバーチャルキャラクターに可能性があります。
3. エージェント対人間:エージェント型推論の台頭。 LLM の利用は、単一ターンのやり取りから エージェント型推論へと移行しており、モデルは複数のステップにわたって計画、推論、実行を行います。現在では、単発の応答を生成するのではなく、目標を達成するためにツール呼び出しを調整し、外部データにアクセスし、出力を繰り返し改善します。初期のデータでは、複数ステップのクエリと連鎖的なツール利用が増加しており、これらをエージェント型の利用の代理指標としています。このパラダイムが広がるにつれて、評価の軸は言語の品質からタスクの完了と効率へと移ります。次の競争の焦点は、モデルがいかに効果的に 持続的な推論を実行できるかにあり、この変化は、大規模なエージェント型推論が実際に何を意味するかを最終的に再定義する可能性があります。
4. 地理的な展望。 LLM の利用はますます グローバル化・分散化しており、北米以外で急速に拡大しています。トークン需要全体に占めるアジアの割合は約 13% から 31% に上昇しており、企業での導入とイノベーションの活発化を反映しています。一方、 中国は主要な勢力として台頭しており、国内消費だけでなく、世界的に競争力のあるモデルの開発もその要因となっています。より広い視点での要点として、 LLM は世界中で役立つ必要があり 言語、文脈、市場を問わず優れた性能を発揮しなければなりません。次の競争段階では、モデルの規模だけでなく、文化への適応力と多言語能力が鍵となります。
5. コストと利用の動態。 LLM 市場はまだコモディティ市場のようには振る舞っていないようで、価格だけでは利用状況をほとんど説明できません。ユーザーはコストと推論の品質、信頼性、能力の幅を比較して判断しています。クローズドモデルは引き続き収益に直結する高価値のワークロードを獲得する一方、オープンモデルは低コストで大量の処理を行うタスクで優勢です。これにより、安定性よりも下位からの絶え間ない圧力によって特徴づけられる動的な均衡が生まれます。オープンソースモデルは継続的に 効率的フロンティアを押し広げており、特に推論やコーディングの領域(例: Kimi K2 Thinking)では、迅速な反復と OSS のイノベーションによって性能差が縮まっています。オープンモデルが改善するたびに、プロプライエタリシステムの価格決定力は圧迫され、優れた統合、一貫性、企業向けサポートによって割高な価格を正当化する必要が生じます。その結果生まれる競争は展開が速く、非対称で、絶えず変化しています。時間の経過とともに品質の収束が加速するにつれ、 価格弾力性が高まる可能性があり、かつては差別化されていた市場が、より流動的な市場へと変わっていきます。
6. リテンションとシンデレラのガラスの靴現象。 基盤モデルが段階的ではなく飛躍的に進化する中、リテンションは競争優位の持続性を測る真の指標となっています。ブレークスルーのたびに、モデルが価値の高いワークロードに完璧に「適合」する、短い投入機会(シンデレラのガラスの靴の瞬間)が生まれ、ユーザーはその適合を見つけると使い続けます。このパラダイムでは、プロダクトと市場の適合はワークロードとモデルの適合に等しく、実際の課題を最初に解決することで、ユーザーがその能力を中心にワークフローや習慣を築き、深く定着した継続的な利用につながります。その結果、技術面でも行動面でも切り替えのコストが高くなります。開発者や投資家が注目すべき指標は成長ではなくリテンション曲線、つまりモデルの更新を経ても使い続ける中核的なコホートの形成です。変化がますます速くなる市場では、こうした重要な未充足ニーズを早期に捉えることが、次の能力の飛躍の後も誰が生き残るかを決定します。
総じて、LLM はプログラミングから創作まで、さまざまな分野の推論に類するタスクに不可欠な計算基盤になりつつあります。モデルの進歩と導入の拡大が続く中、十分な情報に基づいて意思決定を行うには、実際の利用動向を正確に把握することが極めて重要になります。人々による LLM の使い方は必ずしも予想と一致せず、国、州、ユースケースによって大きく異なります。大規模な利用状況を観測することで、LLM の影響に対する理解を現実に根差したものにし、その後の技術的な改善、製品機能、規制などの展開が実際の利用パターンとニーズに即したものになるようにできます。この取り組みが、より多くの実証研究の基盤となり、次世代のフロンティアモデルを構築する中で、AI コミュニティが実際の利用状況を継続的に測定し、そこから学ぶきっかけとなることを願っています。
制約事項
本研究は、単一のプラットフォームである OpenRouter 上で、限られた期間に観測されたパターンを反映しており、より広いエコシステムの一部のみを示しています。企業での利用、ローカルにホストされたデプロイメント、非公開の内部システムなど、データの対象範囲外となる側面もあります。さらに、データ分析のいくつかは 代理指標 に依存しており、たとえば、複数ステップやツール呼び出しを伴うコールからエージェント型推論を特定したり、検証済みの位置情報ではなく請求情報からユーザーの所在地を推定したりしています。そのため、結果は、根底にある現象の確定的な測定値ではなく、行動パターンの傾向を示すものとして解釈する必要があります。
結論
この研究は、大規模言語モデルが世界の計算インフラにどのように組み込まれつつあるかを実証的に示しています。大規模言語モデルは今やワークフロー、アプリケーション、エージェント型システムに不可欠なものとなり、情報の生成、仲介、消費のあり方を変革しています。
この一年で、この分野における 推論 の捉え方に大きな変化が起きました。 o1 クラスのモデルの登場により、長時間の熟考とツールの使用が一般化し、評価の焦点は単発のベンチマークから、プロセスに基づく指標、レイテンシとコストのトレードオフ、オーケストレーション下でのタスク成功へと移りました。推論は、より信頼性の高い結果をもたらすために、モデルがどれほど効果的に計画し、検証できるかを測る尺度になっています。
データは、LLM エコシステムが構造的に多元的であることを示しています。単一のモデルやプロバイダーが支配しているのではなく、ユーザーは状況に応じて、能力、レイテンシ、価格、信頼性といった複数の軸でシステムを選択しています。この多様性は一時的な段階ではなく、市場の根本的な特性です。これにより迅速な反復が促進され、特定のモデルやスタックへのシステム全体の依存が軽減されます。
推論そのものも変化しています。複数ステップのやり取りやツールと連携したやり取りの増加は、静的な補完から動的なオーケストレーションへの移行を示しています。ユーザーは複合的な目標を達成するためにモデル、API、ツールを連鎖的に組み合わせており、いわゆる エージェント型推論が生まれています。エージェント型推論が、すでに人間の推論を超えていないとしても、今後超えると考えられる理由は数多くあります。
地理的には、全体の構図がより分散化しつつあります。アジアの利用シェアは拡大を続けており、特に中国は Moonshot AI、DeepSeek、Qwen などの台頭に見られるように、モデルの開発国であると同時に輸出国としても存在感を示しています。欧米以外のオープンウェイトモデルの成功は、LLM が真にグローバルな計算資源であることを示しています。
実際、 o1 は競争を終わらせたわけではありません。むしろ、その逆でした。設計の可能性を広げたのです。この分野は、単一の巨大モデルへの賭けではなくシステム思考へ、直感ではなく計測へ、リーダーボード上の差ではなく実証的な利用状況分析へと向かっています。この一年が、エージェント型推論を大規模に運用できることを実証したのだとすれば、次の一年は運用の卓越性に焦点が当てられ、実際のタスク完了の測定、分布の変化に伴うばらつきの低減、そして本番規模のワークロードの実務的な要件にモデルの振る舞いを合わせることが重視されます。
参考文献
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- S. Yao、J. Zhao、D. Yu、N. Du、I. Shafran、K. Narasimhan、Y. Cao。ReAct:言語モデルにおける推論と行動の相乗効果。 International Conference on Learning Representations(ICLR)、2023。URL https://arxiv.org/abs/2210.03629。
- A. Grattafiori, A. Dubey, A. Jauhri, A. Pandey, A. Kadian, A. Al-Dahle, A. Letman, A. Mathur, A. Schelten, A. Yang, A. Fan ほか。The Llama 3 Herd of Models。 arXiv プレプリント arXiv:2407.21783、2024 年。URL https://arxiv.org/abs/2407.21783。
- DeepSeek-AI, A. Liu, B. Feng, B. Xue, B. Wang, B. Wu, C. Lu, C. Zhao, C. Deng, C. Zhang, et al. DeepSeek-V3 技術レポート。 arXiv プレプリント arXiv:2412.19437、2024。URL https://arxiv.org/abs/2412.19437。
貢献
この取り組みは、OpenRouter チームが開発した基盤プラットフォーム、インフラストラクチャ、データセット、技術的ビジョンによって実現しました。特に、Alex Atallah、Chris Clark、Louis Vichy は、本研究での探究を可能にするエンジニアリングの基盤とアーキテクチャの方向性を提供しました。Justin Summerville は、実装、テスト、実験の改善全般にわたって基礎的な支援を提供しました。さらに、Natwar Maheshwari によるローンチ支援と Julian Thayn によるデザイン修正も貢献に含まれます。
Malika Aubakirova(a16z)は筆頭著者として、実験設計、実装、データ分析、論文の作成全般を担当しました。Anjney Midha は戦略的な助言を提供し、全体的な枠組みと方向性を形作りました。
初期の探索的な実験とシステム構築は、a16z でのインターンシップ期間中の Abhi Desai の支援を受けました。Rajko Radovanovic と Tyler Burkett は、的を絞った技術的知見と実務的な支援を提供し、この取り組みの重要な構成要素をいくつも強化しました。
すべての貢献者が議論に参加し、フィードバックを提供し、最終原稿をレビューしました。
付録
カテゴリーの内訳の詳細
以下の図は、ロールプレイ、プログラミング、テクノロジーという主要な三分野の内部サブタグ構造を詳しく示しています。各分野には異なる内部パターンがあり、これらのカテゴリーでユーザーが LLM とどのようにやり取りしているかがわかります。



ロールプレイ、テクノロジー、プログラミングの三つの分野すべてに、それぞれ異なる内部パターンが見られ、各主要分野内のさまざまなサブカテゴリーでユーザーが LLM をどのように利用しているかを反映しています。





